国土交通省の大規模修繕ガイドラインで押さえたいポイントは?改訂点もあわせて紹介

 

国土交通省はマンションの大規模修繕について、ガイドラインを示しています。

「国土交通省のガイドラインって難しそう」

そんなふうに思われる方もいるかもしれません。しかし、大規模修繕の重要事項や参考にしたい点が書かれていますので、管理組合の方や大規模修繕の関係者は一度目を通しておきたいところです。

この記事では国土交通省のガイドラインの内容や改訂点の中でも、重要なものをピックアップして解説していきます。

 

大規模修繕と国土交通省ガイドライン

国土交通省が公表する大規模修繕のガイドラインには、マンションのより良い修繕や改修について、法律やデータを踏まえながら多角的な提案がなされています。

知っておくと役立つ情報も多いので、詳しい内容について見てみましょう。

 

大規模修繕のガイドラインって?

国土交通省が示す大規模修繕のガイドラインは、時代背景に応じた修繕方法や統計などが記載されています。

このガイドラインの目的は「タイミングよく」「建物にとってベスト」な修繕を行えるようにすること。修繕の周期、費用の目安、計画方法などを網羅しているので、管理組合の方は一読すると大規模修繕の概要を掴むことができます。

何年かに一度改訂も行われるので、大規模修繕を行う前には必ずチェックしておきたいところです。

 

ガイドラインにおける大規模修繕の定義

ガイドラインでは、大規模修繕の定義も示されています。規模の違いは、コンサルタントの依頼や補助金の申請などにも関わるので、定義はしっかり理解しておきましょう。

少し難しいのですが、ガイドラインには

「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう」(国土交通省ガイドラインより引用)

 

と示されています。ここでいう「大規模」とは、建物の主要な構造物を過半数以上(例えば、5本ある柱の内3本以上塗り直すなど)修繕・改修することを指します。

 

大規模修繕ガイドラインで国土交通省が公表している主な内容

国土交通省では、より良い大規模修繕の実施のために、さまざまな観点から調査を行なっています。次に具体的な内容について、令和3年どのガイドラインを参考にみてみましょう。

 

築年数の長いマンションの問題点

ガイドラインでは、現代のマンションの築年数の長さについて指摘しています。

 

国土交通省の調べでは、建築後30年超のマンションにおける相談内容の半数以上は「給水設備の劣化」や「耐震性の低さ」についてだと示されています。

漏水が起きた、地震で建物にヒビが入った…これらは人命に直結することなので、修繕の必要性を慎重に見極めなければなりません。

さらに、令和3年のガイドラインでは、今後の不安として「居住者の高齢化により管理組合に影響が出ること」と回答した管理組合が全体の7割を超えたことが示されています。

 

修繕・改良・改修の重要性について

建物の築年数が長いマンションの場合、塗装や防水の性能回復だけでなく、時代背景や居住者の様態にあわせた改修なども重要です。建物の劣化には以下の3つの観点から対応することが重要だと示されています。

 

  • 修繕
    劣化部位の修理などを行い、建物の機能や性能を回復させる
  • 改良
    新しい設備の設置や新しい材料を使うなど建物の機能を向上させる
  • 改修
    古くなった部屋や廊下などをリフォームし、元の機能を取り戻す

 

築年数が長ければ長いほど、この3つのポイントを意識して修繕を行う必要があるのです。

 

国土交通省で示された大規模修繕ガイドラインの改訂ポイント

国土交通省では何年かに一度、大規模修繕ガイドラインの見直しを行なっています。時代背景に応じた修繕方法や統計について公表されるため、これから大規模修繕を行う方は必読です。最後に、令和3年の改訂点について解説します。

 

長期修繕計画に関する改訂

これまで既存マンションは25年以上、新築マンションは30年以上の長期修繕計画を作成することが提唱されていました。

 

今回の改訂では、既存・新築共に大規模修繕を2回行うことを含む30年以上の計画を作成することが望ましいと改訂されたのです。

 

理由としては、大規模修繕の周期が変化したことが挙げられます。今までは12年周期でしたが、建物の性能が上がったり、材料の質が良くなったりしたことで、大規模修繕までのスパンが長くなった(15〜18年)のです。

 

工事周期に幅を持たせられるようになった為、既存・新築の計画期間が統一されるようになりました。

 

修繕積立金に関する改訂

修繕積立金はm2単価と1ヶ月あたりの積立金目安の計算方法が改定されました。

 

m2単価は社会情勢や建物の状況によって大きく変化します。ガイドラインのm2単価は、あくまでいくつかの統計の平均値であることを念頭に置いておきましょう。

 

修繕積立金の1ヶ月あたりの目安を計算する方法も変更されました。今までは単にm2単価✖️一部屋あたりの床面積=1部屋あたりの修繕積立金/月でした。今回の改訂では、既存の積立額や修繕期間の長さに応じ、1m2あたりの単価を割り出す方法に変更されました。これにより、ガイドラインで示すm2単価の目安と比較できるようになったのです。

 

まとめ

この記事では、国土交通省が公表する大規模修繕ガイドラインについて解説してきました。まとめると以下のようになります。

記事のまとめ
  • ガイドラインの目的は建物にとって「タイミングよくベストな修繕」を行えるようにすること
  • ガイドラインでは、時代背景に応じた大規模修繕の方法やポイントがわかる
  • 国土交通省の調査によって数年おきに改訂されている

国土交通省では、ガイドラインに限らず様々な大規模修繕に関する情報を発信しています。役立つ情報が記載されていますので、これから修繕を行う予定の方は、1度目を通してみるといいかもしれません。