マンション大規模修繕の周期目安は12年|15年や18年がいいケースも解説

所有者や居住者様を守る大事な不動産。

でも

「メンテナンスって必要なの?」

「一体いつメンテナンスしたらいいの?」

 

こんなお悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。建物の状況によりますが、大規模修繕は周期的に行う場合がほとんどです。

 

また建物の状況、所有者の経済状況、法令などに照らし合わせ、その都度考えていく必要があります。

 

この記事では元大規模修繕現場監督の私が

大規模修繕を行う時期について解説します。

 

大規模修繕の周期目安は12年

マンション大規模修繕の周期は12年を目安にするのがおすすめです。

なぜなら、12年に一度義務付けられている全面打診調査で使った足場を、そのまま大規模修繕に流用できるから。

つまり、大規模修繕の際にかかる足場設置の費用が浮くということです。これによってどのくらいの費用が浮くのか、次で詳しく解説します。

建築基準法で12年周期での全面打診調査が義務付けられている

前提として、先に全面打診調査の詳細を説明しておきましょう。

建築基準法の第8条で「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と定められています。

平成21年には10年に一度の外壁調査が義務化されました。この調査を「全面打診調査」と呼ぶのです。

全面打診調査は築年数10年経過後、3年以内の実施が義務付けられています。

つまり、13年以内。大規模修繕は準備を含めると半年〜一年ほどかかりますから、ちょうど13年以内に収まる「12年」が周期になります。

足場の費用は高い

足場の費用は1平米あたり800〜1000円ほど。

(外周+8m)×高さで割り出しますので

100mの外周で20mの高さがあったとすると

 

(100+8)×20=2160平米

 

2160平米×800円=172万8,000円

 

足場にかかることになります。

 

2回に分けてやるよりは、足場の分を安くするために一度にやってしまいましょう…というのが12年の考え方です。

 

12年周期が最善じゃない場合もある

ここまでは「マンション大規模修繕の周期目安は12年」とお伝えしてきました。しかし、状況によっては15年、18年で行った方がよい場合もあります。

 

15年・18年が最善のケースも

「一緒にやった方が足場代が安くなるんじゃないの?」

そうとは限りません。建物の状況によっては、打診調査後に修繕をした方が費用を抑えられるパターンもあるのです。

 

12年周期で大規模修繕を行なった場合、総戸数30戸のマンションでかかる修繕費は2,500万円ほど。その間に鉄部や防水部分も劣化しますので、維持費に150〜200万円ほどかかります。

 

一方、建物の状態がよく、定期的なメンテナンスを入れて18年周期で行った場合は3,000万円ほど。共用部の維持費などに250万円前後かかります。

 

36年後を想定し、12年周期で3回行う場合と、18年周期で2回行う場合で比較してみましょう。

 

○12年周期の場合

(修繕費2,500万円+維持費200万円)×3=8,100万円

 

○18年周期

(修繕費3,000万円+維持費250万円)×2=6,500万円

打診調査足場代300万円×3=900万円

6,500万円+900万円=7,400万円

 

建物や周辺の環境にもよりますが、長期的に見た場合、必ずしも12年に一度の大規模修繕が良い訳ではありません。

 

こまめにメンテナンスを行なっている場合、15年や18年などの周期で修繕を行なった方が費用を抑えられる可能性もあるということです。

 

ただし安易に周期を延ばすのは注意が必要

「安くなるなら時期を延ばして修繕を行おう」

 

このような安易な考え方で修繕時期を延ばすと、後になって大きなトラブルに見舞われる場合もあります。

過去に私が担当していた物件では、オーナーが修繕代を渋り続けたためにタイルが劣化し、台風で何平米にもわたって剥離したことがありました。

剥離したタイルが四方八方に飛び散り、住宅や車を傷つけてしまったことで、賠償金など余計な支出が発生してしまったのです。

日頃からこまめなメンテナンスを心がけ、建物をベストな状態に保っていることが、修繕時期を延ばす条件になります。

最後にメンテナンスするべきポイントについて見てみましょう。

 

大規模修繕の周期を延ばすためのメンテナンスポイント

では、どのようにメンテナンスを行えば大規模修繕の周期を延ばすことができるのでしょうか。

補修箇所ごとに見てみましょう。

鉄部はサビや腐食がないか確認

階段やパイプスペースなどの鉄部は5年〜7年ほどで劣化します。

サビや腐食がないかを確認し、必要に応じて部分修繕や全体修繕を行います。

 

シーリングは隙間からの雨水侵入に注意

こちらは7年ほどで劣化します。代表的なのは外壁やサッシ周りのシーリングです。

例えば外壁シーリングが劣化すると、隙間から雨水などが入り込み、タイルの浮きやモルタルの腐食を発生させます。見た目だけでなく、安全上の問題も発生しますので、こまめに点検するようにしましょう。

また、排水管の清掃やパイプの点検もあわせて行いましょう。

 

屋上・バルコニーは劣化具合をこまめにチェックしておく

屋上やバルコニーの防水は7年〜10年ほどで劣化します。ウレタン防水、FRP防水など様々な種類があります。

劣化すると雨漏りなどの甚大な被害をもたらし、場合によっては居住者に賠償金を請求されることもあります。

目が届きにくい場所なので、定期的な点検が必要です。

 

その他

電灯、ドア、手すり、エレベーター、その他付属の設備などの点検も必要です。これらは居住者の安全ももちろんですが、快適な暮らしを提供し、長く住んでもらう為にも必要なことです。

こまめな点検を心がけましょう。

 

まとめ

大規模修繕の周期目安は「全面打診調査」に合わせ12年周期で行うのが基本です。

 

建物の状況によっては15年、18年で行った方が費用を抑えられる場合もあります。修繕時期を延長する条件として、日頃から建物のメンテナンスを行い、居住者や歩行者の安心安全を守る必要があります。

 

修繕をする際は複数の管理会社などに相談し、相見積もりをとりながらシュミレーションを行うとなお安心です。

大規模修繕をお考えの方はぜひ参考にしてみてください。