マンション大規模修繕の積立金はいくら必要?徴収方法や金額の決定要因も解説

「大規模修繕の積立金ってどういうもの?」

「積立金の徴収方法は?」

 

こんな疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。積立金は大規模修繕を実施するにあたって、必要不可欠な費用です。

 

積立金の設定方法を間違えると、大規模修繕直前になって

 

「大規模修繕の費用が足りない!!」

 

なんてことにもなりかねません。日頃から所有者や居住者に積立金の理解を得ながら、大規模修繕工事に備えて費用を積み立てていく必要があります。

 

この記事では修繕積立金の徴収方法や積立金額を決定する要因をご紹介したいと思います。

 

大規模修繕の積立金ってなんだろう?

大規模修繕の積立金は、一般的には共用部分などの修繕や維持管理を行うために、入居者が毎月負担するものです。具体的な内容を見ていきましょう。

 

誰が管理しているお金なの?

積立金はマンションの管理組合が管理しています。

修繕積立金の金額は、国土交通省から示されている「長期修繕計画作成ガイドライン」に基づき、分譲事業者が「長期修繕計画」を策定し、決定されます。

長期修繕計画は5年に一度の見直しが推奨されており、その際に管理組合で増額が必要かどうか検討されます。

後述しますが積立方法には「均等積立方式」と「段階積立方式」の2種類があります。

何に使われる?

一般的には大規模修繕に用いられることがほとんどです。大規模修繕は12年〜18年に一度が目安。この期間に向けて予算を立て、金額を調整しながら積み立てていきます。

積立金の用途はそれだけではありません。突発的な事故や災害に用いられることもあります。また、駐車場の改装、ポストの入れ替え、共用部の改修など、居住者の生活環境の質を向上させる目的でも使われる場合があります。

管理費との違いは?

管理費は共用部の保守点検や清掃に使われます。電球の取り替えや、定期清掃や植栽管理を委託する費用などが挙げられます。共用部分の水道光熱費、火災保険、損害保険なども、管理費で賄っています。

管理費は日常的な建物のメンテナンスに用いられるものです。居住者に違いを聞かれた際は、明確に答えられるようにしておきましょう。

大規模修繕費用の積立方法

大規模修繕費用の積立方法は2種類あります。「均等積立方式」と「段階積立方式」です。順番に見てみましょう。

均等積立方式とは?

均等積立方式は定額で積立金を設定する方法です。目標とする予算に対し、毎月一定金額が貯まっていきます。設定した予算から逆算して設定するので、大きな額であっても安定的に徴収できるのが強みです。

しかし、デメリットもあります。毎月一定ということは、予め積立金の額が高く設定されるということです。つまり増額が非常に難しくなります

建物には予期しない劣化や破損が発生します。その際には修繕積立金から費用を捻出するのですが、費用が足らなくなる場合もあるでしょう。

足りない費用は一時金や積立金の増額で居住者から徴収になりますが、総会で居住者に賛同を得る必要があるので、非常にハードルが高いことは理解しておきましょう。

均等積立方式で設定する場合は、建物の構造、周辺環境、予備費など先々のことを見据える必要があります。コンサルタントなどに依頼し、綿密な計画を立てるようにしましょう。

 

段階増額方式とは?

段階増額方式とは修繕資金の状況に応じ、都度積立金額の変更を行う方法です。

建物は年数が経つほど大規模修繕の費用がかかるのが一般的です。この方式では、必要に応じて増額できるので、積立資金の徴収に柔軟性が生まれます。増額には総会で決議され、可決される必要がありますので、ご注意ください。

 

先ほど、国土交通省が示す「長期修繕計画作成ガイドライン」に基づき、分譲事業者が「長期修繕計画」を策定する…と述べました。こちらは5年に一度見直されるのですが、このタイミングで増額を検討するパターンが多いです。

 

最初に低すぎる積立額を設定すると、10年後には10倍の積立額になっていた…なんてことにもなりかねませんので、慎重に計画を立てていきましょう。

 

積立金額は何によって決まる?

国土交通省の調査によれば、積立金額の相場は1戸あたり10,000円/月とされていますが、実際は建物を取り巻く状況によって積立金額が異なります。その要因をみてみましょう。

 

立地環境による建物への影響

1番影響を受けるのが、やはり立地環境です。湿気・台風・積雪・塩害…建物によくない影響を与える要因が多ければ、大規模修繕の費用が高くなる傾向にあります。

 

立地環境は建物の劣化だけではなく、施工業者の作業効率にも大きな影響を与えます。劣化の深刻さ、作業のしづらさ、過酷な環境などがあれば、工期の延長が必要です。それだけ労力を割く必要があるので、人件費も高まってしまいます。

 

材料費の変動

塗装でいえば、材料費の単価は1,000〜5,000円/平米が相場です。アクリル・ウレタン・シリコン・ラジカル・フッ素…様々な種類のものを建物の状況に応じて使い分けるので、積立金額を決定する際には、材料費のことも考慮しなければなりません。

 

材料費は社会情勢によって高騰する場合もあります。使う材料によっては、修繕時期を延ばすことができる場合もあるので、材料費は予算を立てる段階から高めに見積もっておきましょう。

 

建物の構造が複雑な場合

足場は800〜1,000円/平米が一般的な相場です。ただし、これはシンプルな構造かつ20階建て以下の物件の相場です。

 

21階以上のマンションでは、鋼製足場では安全上の問題が生じる為、ゴンドラを使用します。ゴンドラは一台あたり30,000円〜50,000円/日かかります。

 

内部構造おが複雑な場合は、足場を工夫して設置しなければいけなくなる為、人件費も割高になります。

 

足場を組み立てるなど、仮設工事にかかる費用は大規模修繕費用の2割と言われています。予算を立てた際、どのくらいの金額になるのかチェックしておきましょう。

 

大規模修繕の積立金について困ったら

大規模修繕の積立金は、所有者や居住者の今後を左右する大事な資金です。専門家や業者に依頼し、できるだけ正確な積立金額を設定できるようにしましょう。

 

「そんなこと言われても、どこに相談したらいいか分からない」

 

そんな時は、大規模修繕支援センターに問い合わせてみましょう。こちらでは専門のコンサルタントや施工業者を斡旋してくれます。

 

とはいえ、任せっぱなしでは後でトラブルになる可能性もあります。所有者や管理組合の皆さんが正しい知識を備え、専門家などに意見をもらいながら、居住者に積立金額の根拠を説明できるのが望ましい形です。

 

「どうしたらいいのか分からない」

 

そんな時は積極的に外部の機関を利用していきましょう。

 

まとめ

この記事では大規模修繕の積立金についてご紹介してきました。まとめると以下のようになります。

記事のまとめ
  • 修繕積立金とは大規模修繕や突発的な災害に用いられる修繕・改修のための費用
  • 修繕積立金の徴収方法は均等積立方式と段階増額方式がある
  • 修繕積立金額は将来の状況や立地を勘案する必要がある
  • 修繕積立金について困ったら専門家にすぐ相談

以上になります。修繕積立金は予備知識なしで割り出すことは非常に難しいものです。ですが、建物の維持には必要不可欠な要素です

 

所有者、居住者の安全な暮らしのためにも、外部の機関を積極的に利用し、なるべく正確な修繕積立金額を設定できるようにしていきましょう。