「大規模修繕の計画を進めて行く上での注意点は?」
「工事中はどんなことに気をつけたらいいだろう」
大規模修繕工事は管理組合や居住者にとって、かなり大きなイベントです。
普段の小さな修繕と異なり、今日明日でどうにかなるものではありません。最低でも1年以上は準備に時間をかける必要があるくらい、手続きが多いのです。
そのため、何から手をつけていいか分からない、分からないまま準備を進めてしまい、大きなトラブルになる…というケースもあります。
そこで、この記事では大規模修繕工事で注意すべきポイントについてご紹介致します。
目次
大規模修繕 着工前の注意点
大規模修繕の注意点は、数えればキリがないほどの数があります。そこでまずは、中でも着工前に重要なものを3点あげます。
スケジュール設定は1番初めに行う
大規模修繕で1番初めに注意したいのが、大規模修繕の具体的なスケジュールを作成することです。
管理組合として、最低限決めておきたいスケジュールは
管理組合が決めるスケジュール
- 修繕委員会の発足予定日と打ち合わせ予定日
- 建物の状況調査
- 委託会社の決定・見積もり依頼
- 修繕計画の決定
- 総会での説明日
- 工事開始〜終了日
- 工事の流れ(委託会社が決定)
これらは1日単位で表に表せるくらい、しっかり決めておきたいところです。
また大規模修繕は、準備〜着工完了までとにかくやることが沢山あります。しかし、取り漏れてはいけない重要事項ばかりです。どこを直すのか、いつから始めるのかなど、見通しを立て、落ち着いて取り組めるようにしなければなりません。
着工前には、総会で居住者に説明を行い、大規模修繕に関する決議を取る必要があります。大規模修繕の計画づくりには、最低でも3か月〜6ヶ月ほどかかりますので、総会までの期間を逆算して行うようにしましょう。
工事に際しては、施工業者とのスケジューリングも必要です。
「○○年○月○日頃から始めたい」
と予め伝えられるよう、具体的なスケジュールを委託会社に伝えられるようにしておきましょう。急な予定変更をされても、施工業者が対応しきれない場合があります。工期の変更は、大規模修繕の長期化や居住者からのクレームに繋がる可能性もありますので、十分注意しましょう。
見積もり依頼は複数とる
大規模修繕の見積もりは、必ず複数取るようにします。同じ建物でも、見積もりを取る業者によって、費用は大きく変わります。
複数見積もりを取るメリットは以下の2つです。
- 大規模修繕工事の相場観がわかる
- 委託業者の積極性がわかる
大規模修繕の相場は1戸あたり75万円〜100万円ですが、建物の劣化状況や使う材料によって大きく変動します。業者によっては、必要以上に良い材料を使用したり、悪質になれば費用を傘増ししたりする場合もあるのでしょう。
大規模修繕費は、居住者からの修繕積立金で成り立っています。費用を無駄にしないためにも、3社ほど見積もりを取り、単価や材料の相場を見極めて、適切なものを選ぶようにしなければなりません。
見積もりを複数とることで、対応の早さや柔軟性など、会社の積極性も判断できます。工事の見積もりは、どんなに遅くとも3ヶ月〜4ヶ月以内には提出可能です。6ヶ月以上かかるような会社は、費用以前の問題と考えておきましょう。他にも
「なぜこの単価なのか」
「なぜこの材料なのか」
「この項目は何のためにあるのか」
など、厳しい質問にも根拠を持って答えられるか、変更について柔軟に対応してくれるかなども分かります。
見積もりは最低でも2〜3社取るようにしましょう。
施工会社は必ず第三者を選ぶ
委託する業者は、管理組合や居住者と関係のないところを選んだ方が良いです。
縁故による選定は融通が利きやすい分、デメリットもあります。複数の会社に依頼した際、サポート面や費用面で他の会社が優れていた場合、かなり断りづらくなります。紹介した人の立場も難しくなるでしょう。
「なぜうちではないのか」
と不満も持たせてしまうかもしれません。そういったデメリットを理解した上で、縁故者に頼るのであれば、今後の工事の相談などはしやすくなる可能性があります。
また、トラブルが発生すれば縁故者はもちろん、業者を紹介した方にも責任を求められる場合があるので、注意が必要です。
修繕委員会の設立で効率的に
大規模修繕の際は、修繕委員会を設立すると良いでしょう。修繕委員会とは、最終決定権を持つ理事会のご意見番のことです。
管理組合や理事会は普段のマンション運営業務があります。大規模修繕工事の準備や管理は、手続きが多岐にわたるため、専門で動ける修繕委員会が活躍します。
修繕委員会には、理事会役員や過去に大規模修繕を経験したことがある方を加入させるのが理想的です。理事会役員がいることで、理事会とのやりとりもスムーズになりますし、経験者がいれば準備や管理もスムーズになります。
修繕委員会はあくまでご意見番。大規模修繕に関する最終決定権は理事会にありますので、独断専行しないように注意しましょう。
大規模修繕 着工中の注意点
大規模修繕の工事では、居住者の安心・安全を守るための注意点がいくつもあります。ここでは、その中から最低限おさえておきたい注意点について解説します。
必ず施工状況を確認する
施工状況の確認は、必ず行うべき業務です。理由は2つあります。
1つは、施工前と施工後の違いをしっかり監理するためです。
例えば、外壁では「2度塗り」と呼ばれる作業があります。1回の塗装では塗膜が十分でないため、2回塗って塗装の強度を保つのです。もし、施工状況が分からないと、いつのまにか塗装が終わり、しっかり2度塗りが行われたか確認することができません。
悪質な業者になると「チェックされる前に誤魔化す」ようなこともあります。必ず施工前の状況をチェックし、手抜きなどがないか確認しておきましょう。
もう一つの理由は、居住者の安心・安全の確保です。後述しますが、生活スペースに騒音や異臭があると、想像以上のストレスになります。管理組合では、居住者に工事の周知を行ったり、危険な場所に近づけさせないよう、留意しなければいけません。
工事のスケジュールによっては、作業が進む場所や進まない場所などの変更が出る場合があります。また、作業開始後に新たな劣化箇所が見つかることもあるでしょう。
その場合、追加工事の必要性などについても確認する必要があります。
工事内容を周知して、安心安全を確保する
工事中の二大クレームは「騒音」と「異臭」です。
足場工事の騒音は、わかっていても大きなストレスになります。金属を打ち鳴らす音が3日〜1週間、朝から晩まで響くのです。小さな子どもがいる居住者にとっては、精神的に大きな苦痛を伴う作業になるでしょう。
作業がいつ行われるのかを必ず周知し、それでもクレームが来る場合は誠意を持って対応する必要があります。
異臭を最も放つ作業は、バルコニーの防水工事です。バルコニーには「ウレタン」と呼ばれる防水塗料を流し込みます。
下地にシンナーを塗り込むため、ウレタンと相まって耐え難い異臭を放つのです。人体にも有害ですので、必ず窓を閉め切ってもらいしましょう。
他にも、意外とトラブルになりやすいのは、居住者の荷物の移動です。勝手に移動させて壊した、塗料がついた…などはよくあるトラブルです。こちらも事前に移動や撤去を周知しておきましょう。
周知の基本は
- 何をいつ行うか
- 何に注意すべきか
の2つを明確に盛り込んだチラシを配ることです。工事の1週間前には配れるよう、常に施工状況を確認しておきましょう。
問い合わせ窓口を設置する
施工中は、必ず問い合わせ窓口を設置しておきましょう。問い合わせ窓口とは、管理組合や施工を請け負っている会社のことです。
工事中は「次の工事はいつか」「子どもが寝ない」など、多くの問い合わせや意見が舞い込みます。問い合わせ担当者は、委託会社の監督が請け負うことが一般的です。理不尽ともいえるクレームもありますが、ここで食い止めることが円滑な工事につながります。
施工状況に明るい人物を問い合わせ担当に置き、電話やポスティングなどでいつでも対応できるようにしておきましょう。
まとめ
この記事では、大規模修繕における注意点についてご紹介してきました。まとめると
- 1番初めにスケジュールを決める
- 見積もりは複数とる
- 業者は第三者を選ぶ
- 修繕委員会を設立する
- 施工状況を必ず確認する
- 工事内容を周知し、居住者の安心・安全を守る
- 問い合わせ窓口を設置する
以上になります。
大規模修繕は、一手間違えると工事が進まなくなったり、最悪人命が失われるような大事故になったりする可能性もあります。準備や居住者の対応に関しては、注意点をふまえ、丁寧すぎるくらいのつもりで行なっていきましょう。